雷火豐

らいかほう

勢いが満ちて、絶頂に近づいていく時

上卦:震(雷) 下卦:離(火)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文豐、亨、王假之、勿憂、宜日中。

書き下し豊(ほう)は、亨(とお)る。王(おう)之(これ)に假(いた)る。憂(うれ)うる勿(なか)れ、日中(にっちゅう)に宜(よろ)し。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、ものごとが大きく盛り上がり、豊かさや勢いが最高潮に近づいていく——そんな華やかな空気が流れているようです。

真昼の太陽がいちばん高く昇るような、明るく満ち足りた局面ですね。成果が膨らみ、人が集まり、注目を浴びる。そんなイメージの卦です。

仕事や活動が一気に盛り上がっている時、注目されて勢いに乗っている時、大きな成功を手にしている時に、この卦はよく出ます。

ただ、覚えておいてほしいことがあります。太陽は真昼を過ぎれば、必ず傾きはじめる。だから、この豊かさを長く保てるか、それとも頂点でかげりが差すかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってくるんです。

だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階

白文遇其配主、雖旬无咎、往有尚。

書き下し其の配主(はいしゅ)に遇(あ)う。旬(ひと)しと雖(いえど)も咎(とが)无し、往(ゆ)きて尚(たっと)ばるる有り。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
対等な相手と出会う段階。一緒に進めば、ちゃんと評価される時です。
今は、こんな時
自分と釣り合う、対等な相手やパートナーに出会えている——そんな手応え、ありませんか?力量の近い仲間ができた、ちょうどいい協力者と組めた、お互いに高め合える関係が始まった。盛り上がりの入り口で、横に並んで進める相手を得る。今は、そんな良い出会いの段階だと思います。
とるべき行動
今は、その相手と遠慮なく手を組んで進んでいくのがよさそうです。対等だからといって張り合う必要はありません。立場が同じくらいでも、一緒に進めば咎められることはなく、むしろ評価される(往きて尚ばる)時ですから、安心して力を合わせてみてください。
気をつけたいこと
「相手と同じくらいの実力だと、いつか張り合いになるかも」と身構えすぎないことです。今は、対等さがプラスに働く段階。競争相手ではなく、共に登る仲間として付き合えると、二人とも伸びていきますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷山小過(らいざんしょうか)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

六二(りくじ)

白文豐其蔀、日中見斗、往得疑疾、有孚發若、吉。

書き下し其の蔀(ほう)を豊(ゆた)かにす。日中に斗(と)を見る。往(ゆ)けば疑疾(ぎしつ)を得。孚(まこと)有りて発若(はつじゃく)たれば、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
勢いの中にかげりが差す段階。それでも誠実を貫けば、良い結果になります。
今は、こんな時
盛り上がっているはずなのに、何かに覆われて見通しが暗い——真昼なのに北斗星が見えてしまうような、おかしな暗さを感じていませんか?うまくいっているのに不安が拭えない、誰かに邪魔されて実力が届かない、誤解や疑いで動きにくい。今、前に出ようとすると、かえって疑われたり妬まれたりしやすい局面かもしれません。
とるべき行動
今は、焦って自分を売り込もうとせず、誠実さで信頼を勝ち取るのがよさそうです。疑いの空気の中でも、嘘のない真心で接し続けてみてください。まことの心がちゃんと相手に伝わり開けば、良い結果になる(吉)時ですから、目先の誤解にめげず、誠実さを貫くことを大事にしてくださいね。
気をつけたいこと
暗さに苛立って、強引に動いて分からせようとすると、疑いの病をこじらせます。今は、説得より信頼。時間をかけてでも、誠意で相手の心を開く。その遠回りが、いちばんの近道になりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷天大壯(らいてんたいそう)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

九三(きゅうさん)

白文豐其沛、日中見沬、折其右肱、无咎。

書き下し其の沛(はい)を豊(ゆた)かにす。日中に沬(まい)を見る。其の右肱(うこう)を折る。咎(とが)无し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
覆いがさらに深まり、力を発揮できない段階。痛手はあっても咎にはなりません。
今は、こんな時
暗さがいっそう深まって、真昼に小さな星まで見えるほど、視界がきかなくなっている——そんな八方ふさがりを感じていませんか?頼れるはずの右腕を失った、力を貸してくれる人がいなくなった、自分の手足をもがれたように動けない。盛り上がりのただ中で、肝心の力を発揮できず、もどかしい思いをしている段階かもしれません。
とるべき行動
今は、無理に成果を出そうと突っ走らないのが賢明です。右腕を折るような痛手があっても、それは今の時勢のせいで、あなたの落ち度ではありません。この状況で大きく動けなくても、咎められることはない時ですから、自分を責めず、明るさが戻るのを待ちながら、できる範囲で身を守ってください。
気をつけたいこと
頼れる人や力を失った焦りから、独りで無理に背負い込まないことです。今は、力を発揮しにくい時。動けないのは時のせいだと割り切って、暗さが過ぎるのを待つ落ち着きを持ちましょう。

この爻が陰陽反転すると、卦は震為雷(しんいらい)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

九四(きゅうし)

白文豐其蔀、日中見斗、遇其夷主、吉。

書き下し其の蔀(ほう)を豊(ゆた)かにす。日中に斗(と)を見る。其の夷主(いしゅ)に遇(あ)う、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
暗さの中で、対等な協力者に出会う段階。流れが好転する時です。
今は、こんな時
ずっと覆われて暗かったのに、ふと、自分と対等に組める相手が現れた——そんな転機を感じていませんか?行き詰まりの中で頼れる仲間ができた、孤立していたところに理解者が現れた、暗いトンネルの先に光が見えてきた。真昼に北斗が見えるような暗さは続いていても、そこに対等のパートナーが加わることで、流れが変わりはじめる段階です。
とるべき行動
今は、その出会いを逃さず、手を組んでみるのがよさそうです。暗い時期だからこそ、対等に支え合える相手は心強い味方になります。ちょうどよい協力者に出会えて、流れが好転する(吉)時ですから、ひとりで抱えてきたものを、その人と分かち合ってみてください。
気をつけたいこと
「今さら人に頼るなんて」とためらって、せっかくの出会いを生かせないのはもったいないです。暗さの中で差し伸べられた手は、本物の縁かもしれません。素直に組む勇気を、持ってみてくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は地火明夷(ちかめいい)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

六五(りくご)

白文來章、有慶譽、吉。

書き下し章(しょう)を来(きた)す。慶(けい)と誉(ほまれ)有り、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
優れた人や良いものを招き寄せる段階。喜びと名誉に恵まれる時です。
今は、こんな時
あなたのもとに、優れた才能や良いもの、力になってくれる人が、自然と集まってきている——そんな手応え、ありませんか?周りが力を貸してくれる、良い縁や評価が向こうからやってくる、努力が認められて称えられる。盛り上がりの頂点近くで、人や幸運を引き寄せる、いちばん輝いている段階のひとつです。
とるべき行動
今は、集まってくる人や良いものを、心を開いて迎え入れるのがよさそうです。優れたものを遠ざけず、素直に受け取ってください。それが、慶事と名誉につながる(吉)時ですから、遠慮しすぎず、良い流れに乗っていいと思いますよ。そして、その幸運を自分だけで抱えず、周りと分かち合えると、さらに良くなります。
気をつけたいこと
恵まれている時こそ、招き寄せてくれた人たちへの感謝を忘れないことです。良いものが集まるのは、あなた一人の力ではありません。その謙虚さが、この輝きを長持ちさせてくれますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤火革(たくかかく)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階

白文豐其屋、蔀其家、闚其戶、闃其无人、三歲不覿、凶。

書き下し其の屋(おく)を豊(ゆた)かにし、其の家を蔀(おお)う。其の戸を闚(うかが)えば、闃(げき)として其れ人无し。三歳(さんさい)覿(み)ず、凶。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
豊かさを抱え込みすぎて、孤立してしまう段階。注意が必要な時です。
今は、こんな時
家を立派に大きくしすぎた結果、かえって周りを覆い隠して、中には誰もいなくなってしまった——そんな寂しい状況になっていませんか?成功して立派になったのに、人が離れていった。財や地位を抱え込んで、気づけば孤立していた。門を覗いてもひっそりとして、長いあいだ誰とも会えない。豊かさが極まった末に、人の縁が消えてしまう——そんな、行き過ぎの局面です。
とるべき行動
今、このまま大きさや豊かさを抱え込み続けるのは——うまくいきにくい時です。だからこそ、外に向かって門を開くことを意識してみてください。立派さを誇るより、人とのつながりを取り戻す。抱え込んだものを少し手放して、周りに分け与える——それが、孤立から抜け出す一歩になりますよ。
気をつけたいこと
「これだけ成功したのに、なぜ人が離れるんだ」と立派さにしがみつくほど、孤立は深まります。満ちきったものは欠けていくのが自然の流れ。高く構えた屋根を少し低くして、人が入ってこられる隙間をつくる——その柔らかさを、どうか思い出してくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は離為火(りいか)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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