兌為澤

だいたく

喜びが行き交って、人と打ち解けていく時

上卦:兌(澤) 下卦:兌(澤)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文兌、亨、利貞。

書き下し兌(だ)は、亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よろ)し。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、楽しさや喜び、和やかさが行き交って、人と打ち解けやすい——そんな明るい空気が流れているようです。

水をたたえた沢が、潤いと恵みをもたらすように、笑顔やよろこびが人を引き寄せ、つながりを生む局面ですね。

人付き合いが楽しい時、誰かと喜びを分かち合っている時、コミュニケーションが弾む時に、この卦はよく出ます。

ただ、その「喜び」が、心からの健やかな喜びになるか、それとも上辺だけの快楽や、こびへつらいに流れてしまうかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってくるんです。

だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階

白文和兌、吉。

書き下し和(やわら)ぎて兌(よろこ)ぶ、吉(きち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
わだかまりなく、和やかに喜べる段階。とても良い時です。
今は、こんな時
誰に対しても垣根をつくらず、おだやかに打ち解けて、自然と笑い合えている——そんな心地よさを感じていませんか?特定の誰かにこびるでもなく、見返りを求めるでもなく、ただ和やかに人と接している。利害をはさまず、すなおに人と喜びを分かち合えている。今は、そういう曇りのない、健やかな喜びの段階だと思います。
とるべき行動
今は、その自然な和やかさを、そのまま大切にしていくのがよさそうです。誰かに媚びたり、計算したりせず、すなおに人と接してみてください。わだかまりのない和やかな喜びは、とても良いもの(吉)ですから、安心して、その開かれた心のままで人とつながっていって大丈夫ですよ。
気をつけたいこと
ただ、和やかさが心地よいからといって、特定の相手だけに偏って取り入りたくならないように。誰に対しても分け隔てのない、今のフラットな喜び方こそが、いちばんの強みです。その公平さを、どうか保ってくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤水困(たくすいこん)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

九二(きゅうじ)

白文孚兌、吉、悔亡。

書き下し孚(まこと)ありて兌(よろこ)ぶ、吉(きち)、悔(く)い亡(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
心の底からの、誠実な喜びの段階。信頼に支えられた良い時です。
今は、こんな時
上辺だけでなく、内側の真心から湧いてくる喜びを感じていませんか?嘘やお世辞ではなく、誠実な気持ちで人と向き合えている。信頼でつながった関係の中で、心から「うれしい」と思える。表面的な楽しさではなく、芯のある喜びがある。今は、まことの心に裏打ちされた、健やかな喜びの段階です。
とるべき行動
今は、その誠実さを軸に、人と関わっていくのがよさそうです。真心からの喜びは、相手にもちゃんと伝わります。まことのこもった喜びは、良い結果につながり、後悔の種も消えていきます(吉・悔亡)から、安心して、嘘のない自分の気持ちで人とつながっていってください。
気をつけたいこと
誠実であろうとするあまり、堅くなりすぎないことです。真心は大事ですが、肩に力が入りすぎると相手も構えてしまいます。芯の誠実さは保ちつつ、表情はやわらかく——そのバランスが、喜びをいっそう深めてくれますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤雷随(たくらいずい)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

六三(りくさん)

白文來兌、凶。

書き下し来(きた)りて兌(よろこ)ぶ、凶。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
外に喜びをねだり、こびてしまう段階。注意が必要な時です。
今は、こんな時
自分の内側ではなく、外の誰かや何かに喜びを求めて、こびるような振る舞いになっていませんか?人の機嫌を取って楽しさを得ようとする、刺激や快楽を外に探し回る、相手に気に入られたくて自分を曲げてしまう。心の中に喜びの源を持てず、外からもらおうとして、つい媚びへつらってしまう。今はそんな、危うい段階かもしれません。
とるべき行動
今は、外に喜びをねだるのを、いったん控えるのがよさそうです。こびて快を求めにいくと、うまくいきにくい(凶)時ですから、まずは自分の内側に、喜びの源を取り戻すことを大事にしてみてください。人に気に入られることより、自分が心から納得できる過ごし方を選ぶ。それが、危うさから抜け出す一歩になりますよ。
気をつけたいこと
「楽しませてもらおう」「気に入られよう」と外ばかり向いていると、自分を見失います。喜びは、もらうものではなく、内から湧くもの。媚びる代わりに、自分の足で立つ。そこを意識すると、こびる必要もなくなっていきますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤天夬(たくてんかい)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

九四(きゅうし)

白文商兌、未寧、介疾有喜。

書き下し商(はか)りて兌(よろこ)ぶ、未(いま)だ寧(やす)からず。疾(しつ)を介(へだ)つれば喜び有り。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
どの喜びを選ぶか迷う段階。悪い誘いを断てれば、ちゃんと喜びが訪れます。
今は、こんな時
あちらの楽しさ、こちらの誘い、と複数の選択肢の前で、どれを取るか決めきれずに落ち着かない——そんな状態にいませんか?健全な喜びと、目先の快楽との間で揺れている。良い誘いと悪い誘いが混ざっていて見分けがつかない。あれこれ思案して、心がまだ定まらない。今は、喜びの選び方を問われている、迷いの段階です。
とるべき行動
今は、迷う中でも「これは良くない」と感じる誘いを、きっぱり断つのがよさそうです。悪い方の喜び(目先の快楽やよくない付き合い)から距離を取ってみてください。害になるものを切り離せれば、ちゃんと喜びが訪れます(喜び有り)から、心がざわつく誘いには、勇気を持って線を引きましょう。
気をつけたいこと
「どっちも捨てがたい」と全部に手を出すと、結局どれも中途半端になります。今は、選ぶ時。心が落ち着かないのは、まだ良くないものを切れていないサインかもしれません。手放す決断が、本当の喜びへの道を開きますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は水澤節(すいたくせつ)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

九五(きゅうご)

白文孚于剝、有厲。

書き下し剝(はく)に孚(まこと)あり、厲(あや)うき有り。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
信じてはいけないものを、信じてしまいやすい段階。危うさに注意の時です。
今は、こんな時
本当は警戒すべき相手や、あなたを内側からむしばむようなものを、つい信用してしまっていませんか?口当たりのいい誘惑にほだされている、表面は魅力的でも実は害になるものに惹かれている、信じるべきでない人に心を許しかけている。甘い喜びの裏に、あなたをそっと削り取っていくものが潜んでいる——今はそんな、見極めの難しい段階かもしれません。
とるべき行動
今は、「この喜びは本物だろうか」と一歩引いて見極めるのがよさそうです。心地よさの裏に、自分を損なうものが隠れていないか確かめてみてください。信じてはいけないものを信じると、危うさがあります(厲)から、甘い言葉や心地よい誘いほど、慎重に。耳に痛い忠告のほうが、案外あなたを守ってくれますよ。
気をつけたいこと
「これだけ心地よいのだから大丈夫」という油断が、いちばん危ない時です。喜びに包まれている時こそ、それが何によってもたらされているのかを冷静に見る。心地よさと安全は、いつも一致するとは限りません。そこだけ、見誤らないでくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷澤歸妹(らいたくきまい)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階

白文引兌。

書き下し引(ひ)きて兌(よろこ)ぶ。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
喜びを引き出そうと誘い込む段階。けじめなく快楽に流されやすい時です。
今は、こんな時
もっと楽しく、もっと喜びを、と外へ外へと引き出そうとして、けじめがなくなっていませんか?刺激を求めてやめどきを見失っている、楽しさに引きずられて深みにはまっている、人を誘い込んだり誘い込まれたりして際限がなくなっている。喜びそのものに引っ張られて、自分でブレーキがきかなくなる——そんな、行き過ぎの局面です。
とるべき行動
今は、際限なく喜びを追い求める手を、いちど止めてみるのがよさそうです。「これ以上はやめておこう」という区切りを、自分で引いてみてください。引き込まれるままに流されるより、立ち止まって我に返る。快楽の引力に飲まれないよう、けじめをつけることが、この段階の身の守りになりますよ。
気をつけたいこと
「楽しいんだからいいじゃないか」と歯止めを外すと、後で抜け出せなくなります。満ちきった喜びは、欠けていくのが自然の流れ。引き際を心得てこそ、喜びは健やかなまま残ります。やめどきの美しさを、どうか大事にしてくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は天澤履(てんたくり)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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