風水渙
風水渙(ふうすいかん)とは、「こわばっていたものが、ほどけて散っていく時」を表す卦です。
上卦:巽(風) 下卦:坎(水)
白文渙、亨。王假有廟、利涉大川、利貞。
書き下し渙(かん)は、亨(とお)る。王(おう)有廟(ゆうびょう)に假(いた)る。大川(たいせん)を涉(わた)るに利(よろ)し。貞(ただ)しきに利し。
現代語訳渙の卦は、通じる。王が祖先の廟に詣でる。大きな川を渡るのがよい。正しさを守るのがよい。
やさしく読み解くと
今のあなたの周りには、固まっていたもの・滞っていたものが、ゆっくりほどけて流れ出していく——そんな空気が流れているようです。
水面に風が吹いて、張りつめていた氷が溶け、波紋になって広がっていくイメージですね。
わだかまりが解けていく時、こわばった人間関係がほぐれ始める時、ひとつ所にしがみついていた気持ちを手放す時に、この卦はよく出ます。
ただ、その「散らす・ほどける」流れが、新しいまとまりや再出発につながるか、それともただバラバラに崩れて終わるかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってくるんです。
だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。
六つの爻辞 ― 段階ごとのことば
卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。
初六(しょりく) ― いちばん最初の段階
白文用拯馬壯、吉。
書き下し用(もっ)て拯(すく)うに馬(うま)壯(さか)んなり、吉(きち)。
やさしく読み解くと
散らばり始めの今のうちに、力のある助けを借りれば立て直せる段階かもしれません。
この爻が陰陽反転すると、卦は風澤中孚(ふうたくちゅうふ)に変わります(之卦)。
九二(きゅうじ)
白文渙奔其机、悔亡。
書き下し渙(さん)ずるとき其の机(つくえ)に奔(はし)る、悔(く)い亡(ほろ)ぶ。
やさしく読み解くと
危うく崩れそうな時こそ、拠り所に駆け戻ると悔いが消える段階のようです。
この爻が陰陽反転すると、卦は風地観(ふうちかん)に変わります(之卦)。
六三(りくさん)
白文渙其躬、无悔。
書き下し其の躬(み)を渙(さん)ず、悔(く)い无(な)し。
やさしく読み解くと
自分へのこだわりを手放せる段階。私心を散らせば、悔いは残りません。
この爻が陰陽反転すると、卦は巽為風(そんいふう)に変わります(之卦)。
六四(りくし)
白文渙其群、元吉。渙有丘、匪夷所思。
書き下し其の群(むれ)を渙(さん)ず、元(おお)いに吉(きち)。渙じて丘(きゅう)有り、夷(つね)の思う所に匪(あら)ず。
やさしく読み解くと
小さな群れを散らして、より大きくまとまる段階。最上の吉です。
この爻が陰陽反転すると、卦は天水訟(てんすいしょう)に変わります(之卦)。
九五(きゅうご)
白文渙汗其大號、渙王居、无咎。
書き下し其の大號(たいごう)を渙(さん)じて汗(あせ)のごとくし、王(おう)の居(たくわ)えを渙ず、咎(とが)无(な)し。
やさしく読み解くと
大きな号令を発し、ためこんだものを散らして施す段階。咎められません。
この爻が陰陽反転すると、卦は山水蒙(さんすいもう)に変わります(之卦)。
上九(じょうきゅう) ― いちばん最後の段階
白文渙其血、去逖出、无咎。
書き下し其の血(ち)を渙(さん)じ、去(さ)りて逖(とお)く出(い)づ、咎(とが)无(な)し。
やさしく読み解くと
害や危険を遠くへ散らし、その場から離れ出る段階。咎められません。
この爻が陰陽反転すると、卦は坎為水(かんいすい)に変わります(之卦)。
白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下し・現代語訳は当サイトによる訓読・訳です。
ここまで読んでくださって、おつかれさまでした。学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。
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