雷地豫

らいちよ

喜びと勢いがわき上がり、心が浮き立つ時

上卦:震(雷) 下卦:坤(地)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文豫、利建侯、行師。

書き下し豫(よ)は、侯(こう)を建(た)て、師(いくさ)を行(や)るに利(よろ)し。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、地の中から雷が鳴り響くように、エネルギーがわき上がって、心が浮き立つ——そんな、喜びと高揚の空気が流れているようです。

よろこびに満ちて、人も自然と集まり、勢いに乗ってものごとが動き出していくイメージですね。

楽しいことが続く時、気持ちが盛り上がっている時、準備が整って動き出す時、人を巻き込んで何かを始める時に、この卦はよく出ます。

ただ、ひとつだけお伝えしておきますね。

喜びや楽しさは、人を元気にもするけれど、溺れると足をすくう、両刃のものなんです。その勢いを良い力に変えられるか、それともただ浮かれて流されるかは、あなたが今どの段階にいるかで大きく分かれます。

だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初六(しょりく) ― いちばん最初の段階

白文鳴豫、凶。

書き下し鳴(な)る豫(よ)、凶。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
喜びを得意げに表に出しすぎる段階。浮かれが目立つと危うい時です。
今は、こんな時
嬉しさや手応えを、つい声高に言いふらしてしまう——今は、浮かれた気持ちが外に出すぎて、足元がおろそかになりがちな時かもしれません。ちょっとうまくいったことを自慢したくなる、調子に乗ってSNSで言いふらす、勢いで大きなことを口にしてしまう。そんな心当たり、ありませんか?喜びそのものは悪くないのに、それを誇示することで、流れが乱れやすい局面です。
とるべき行動
嬉しい時こそ、それを表に出しすぎないよう、ぐっと抑えるのがよさそうです。得意げに浮かれを言いふらすのは、凶とはっきり出ています。喜びは胸の内で味わって、静かに足元を固める。浮かれを口にしない、それだけで、つまずきはずいぶん減りますよ。
気をつけたいこと
いちばんの落とし穴は、「ちょっとうまくいった」を大きく見せたくなる気持ちです。早すぎる自慢は、妬みを呼んだり、約束したことに自分で苦しんだりしがち。嬉しい時ほど、口は慎重に。喜びは、静かに育てるほど大きくなります。

この爻が陰陽反転すると、卦は震為雷(しんいらい)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

六二(りくじ)

白文介于石、不終日、貞吉。

書き下し石(いし)に介(かた)し、日(ひ)を終(お)えず、貞(てい)なれば吉。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
石のように節操が堅い段階。流されず、機を見抜ける時です。
今は、こんな時
周りが浮かれて楽しんでいても、石のようにどっしりと自分を保ち、しかも物事の兆しを素早く見抜く——今のあなたは、そんな、ぶれない芯と鋭い見極めを持っている時かもしれません。みんなが盛り上がる中で冷静でいられる、流行や勢いに流されない、潮目の変化にいち早く気づける。そんな手応え、ありませんか?浮ついた空気の中で、いちばん地に足がついている局面です。
とるべき行動
周りの勢いに流されず、自分の節度を保ったまま、変化の兆しを早めにとらえて動くといいと思いますよ。石のように固く正しくいれば、吉と出ています。一日と待たずに見極める、その素早い判断を信じて。浮かれの中で冷静でいられるのは、弱さではなく、いちばんの強みです。
気をつけたいこと
堅実さが行きすぎて、頑固になったり、楽しむべき時まで頑なになったりは避けたいところ。芯を持つことと、心を閉ざすことは別です。ぶれない軸は保ちつつ、見極めたら動く軽やかさも忘れずに。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷水解(らいすいかい)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

六三(りくさん)

白文盱豫、悔。遲有悔。

書き下し盱(み)て豫(たの)しむ、悔(く)い有り。遅(おそ)ければ悔い有り。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
上を見上げ、媚びて楽しむ段階。ぐずぐずすると悔いが残る時です。
今は、こんな時
上の人や強い人の顔色をうかがい、媚びることで楽しみにあずかろうとする——今は、自分の足で立たず、誰かに寄りかかって甘い汁を吸おうとしてしまいがちな時かもしれません。力ある人に取り入って得をしようとしている、上目づかいで機嫌をうかがっている、自分で動かず誰かの恩恵を待っている。そんな心当たり、ありませんか?居心地はいいようで、後悔の種が静かに育つ局面です。
とるべき行動
人に媚びて楽をしようとする姿勢に気づいたら、できるだけ早く、自分の足で立つ方向に切り替えるのがよさそうです。媚びて楽しむのは悔いを残し、ぐずぐず先延ばしにすればなお悔いが残ると出ています。改めるなら、早いほどいい。寄りかかる相手を探すより、自分にできることに目を向けてみてください。
気をつけたいこと
いちばん危ないのは、「もう少しこのままでいいか」と決断を先延ばしにすることです。媚びる楽さに慣れるほど、抜け出しにくくなります。気づいた今が、切り替えどき。遅れるほど、悔いは大きくなりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷山小過(らいざんしょうか)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

九四(きゅうし)

白文由豫、大有得。勿疑。朋盍簪。

書き下し由(よ)りて豫(たの)しむ、大いに得(う)る有り。疑(うたが)う勿(なか)れ。朋(とも)盍(あつ)まり簪(しん)す。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
喜びの中心になる段階。人が集まり、大いに得るものがある時です。
今は、こんな時
周りの楽しみや勢いが、あなたを中心にわき起こってくる——今のあなたは、人を惹きつけ、場を動かす、その中心にいる時かもしれません。あなたの呼びかけに人が集まる、あなたが動くと周りも乗ってくる、リーダーや旗振り役を任されている。そんな手応え、ありませんか?多くのものが、あなたのもとに集まってくる、勢いに満ちた局面です。
とるべき行動
自分が中心になって場を動かせると感じたら、迷わず、思い切ってやってみるといいと思いますよ。この立場では、大いに得るものがある。疑わず進めば、友も集まり結束すると出ています。「自分なんかが中心でいいのか」とためらわず、堂々と。あなたが心を開いて動けば、人は自然と集まり、力を貸してくれます。
気をつけたいこと
人が集まる時ほど、自分の中に疑いや迷いがあると、それが伝わって結束が緩みます。「本当に大丈夫かな」と揺れるより、まず自分が信じて進むこと。あなたの確信が、周りの安心になりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は坤為地(こんいち)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

六五(りくご)

白文貞疾、恆不死。

書き下し貞(てい)にして疾(や)む、恒(つね)に死(し)せず。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
安楽に流されがちだが、芯は失わない段階。粘り強く持ちこたえる時です。
今は、こんな時
楽な状況や心地よさに、少し流されかけている——でも、完全にダメになるわけではなく、しぶとく持ちこたえている。今は、そんな「もたれかかりたい気持ち」と戦いながらも、芯のところは保っている時かもしれません。安定にあぐらをかきそうになる、楽なほうに流れたくなる、慢性的なモヤモヤを抱えている。そんな心当たり、ありませんか?病のように厄介だけれど、致命傷にはならない局面です。
とるべき行動
安楽に完全に身を委ねず、自分の役割や芯だけは手放さないようにするといいと思いますよ。長く患うようでも、滅びはしないと出ています。一気に良くするのは難しくても、踏みとどまり続けることに意味がある時。流されそうな自分を責めず、それでも芯を保つ。その粘りが、あなたを守ります。
気をつけたいこと
「どうせ大丈夫だから」と完全に楽なほうへ倒れ込むと、ずるずると長引きます。致命傷にはならないからこそ、ずるずる続いてしまう厄介さがある段階。だらしなく流れきらないよう、最低限の手綱だけは握っていてください。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤地萃(たくちすい)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階

白文冥豫、成有渝、无咎。

書き下し冥(くら)き豫(よ)、成(な)れども渝(か)わる有り、咎(とが)无し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
楽しみに溺れきった極み。でも、目を覚まして改めれば救われる段階です。
今は、こんな時
楽しみにのめり込んで、頭がぼんやりと曇ってしまった——今は、喜びや快楽に溺れすぎて、進むべき方向が見えなくなりかけている、その極みにいるのかもしれません。遊びや楽しみが過ぎて生活が乱れている、刺激を求め続けて止まれない、楽なほうに溺れて抜け出せない。そんな心当たり、ありませんか?このまま行けば危ういけれど、まだ引き返せる局面です。
とるべき行動
溺れていることに気づいたら、そこで立ち止まって、生活や習慣を改めてみるといいと思いますよ。溺れた極みでも、目を覚まして改めれば、咎められることはないと出ています。大事なのは、「もう手遅れだ」と諦めないこと。今気づけたなら、まだ間に合います。ひとつずつ、整え直していきましょう。
気をつけたいこと
いちばんの落とし穴は、「ここまで来たらもう同じ」と開き直ってしまうことです。極みまで来たからこそ、改める価値がある段階。過去を責めるより、これから何を変えるか。そこに目を向けてくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は火地晋(かちしん)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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