地風升

ちふうしょう

一歩ずつ、着実に上へ伸びていく時

上卦:坤(地) 下卦:巽(風)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文升、元亨、用見大人、勿恤、南征吉。

書き下し升(しょう)は、元(おお)いに亨(とお)る。用(もっ)て大人(たいじん)を見る。恤(うれ)うる勿(なか)れ、南(みなみ)に征(ゆ)けば吉。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、地面の下にまかれた種が芽を出し、少しずつ上へ伸びていく——そんな、ゆっくりとした上昇の空気が流れているようです。

焦らず、一段ずつ階段をのぼっていくようなイメージですね。

昇進や昇格の話が近づいている時、コツコツ続けてきたことが実り始める時、新しい環境で少しずつ認められていく時に、この卦はよく出ます。地中の根が見えないところで育って、やがて木が天へ伸びていくように、今は伸びていける流れにいるんです。

ただ、上へ伸びる勢いというのは、進んでいくうちは大きな力になりますが、昇りすぎて止まれなくなると、かえって身を危うくすることもあるんです。

その上昇が良い実りになるかどうかは、あなたが今どの段階にいるかで変わってきます。

だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初六(しょりく) ― いちばん最初の段階

白文允升、大吉。

書き下し允(まこと)に升(のぼ)る、大吉(たいきち)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
信じて、素直に流れに乗っていける時。とても良いスタートの段階かもしれません。
今は、こんな時
何か新しいことが始まろうとしていて、「この流れに乗ってみよう」と、素直に身をゆだねられる——そんな時にいませんか?信頼できる人に引っ張ってもらえる、良いタイミングで誘いが来た、上の人に認められて一歩を踏み出せる。まだ自分の実力に確信が持てなくても、周りに信じてもらえて、その勢いに乗っていける段階です。
とるべき行動
今は、変にためらわず、信じて上っていくのがよさそうです。引っ張ってくれる人がいるなら、その手に素直につかまってみてください。これは、大いに良い、最高のスタートと言える時ですから、「自分なんて」と尻込みしなくて大丈夫。素直さこそが、この上昇の流れに乗る最大のコツですよ。
気をつけたいこと
いいスタートだからこそ、疑いすぎたり、慎重になりすぎて動けなくなったりするのはもったいないです。今は、信じて乗ること。下心や打算で動くのではなく、まっすぐな気持ちでついていくと、流れはどんどん良くなりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は地天泰(ちてんたい)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

九二(きゅうじ)

白文孚乃利用禴、无咎。

書き下し孚(まこと)あれば乃(すなわ)ち禴(やく)を用(もち)うるに利(よろ)し、咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
見栄えより中身。誠実ささえあれば、ちゃんと通じる段階かもしれません。
今は、こんな時
立派な準備や派手な体裁が整っていなくて、「こんな簡素なやり方で大丈夫かな」と不安になっていませんか?十分なお金や道具がそろっていない、肩書きや実績がまだ乏しい、人に見せられるほどの形になっていない。でも今は、その外側の足りなさは、実はあまり問題にならない時なんです。大事なのは、あなたの中にある誠実さや真心のほうです。
とるべき行動
背伸びして体裁を整えようとするより、ありのままの誠実な気持ちで臨むのがよさそうです。簡素でも、心がこもっていれば十分に伝わります。真心を持って向き合えば、それで通じる時。咎められることもありませんから、「足りない、足りない」と焦らなくて大丈夫ですよ。
気をつけたいこと
見栄を張って無理に立派に見せようとすると、かえって中身の薄さが目立ってしまいます。今は、飾らないこと。誠実さという中身さえあれば、形の不足は気にしなくていい時なんです。

この爻が陰陽反転すると、卦は地山謙(ちざんけん)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

九三(きゅうさん)

白文升虛邑。

書き下し虛邑(きょゆう)に升(のぼ)る。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
抵抗なく、すいすい進んでいける段階のようです。ただ、軽やかさゆえの注意も。
今は、こんな時
行く手をはばむものが何もなくて、まるで誰もいない街に入っていくみたいに、すんなり前に進めている——そんな手応えはありませんか?話がトントン拍子に進む、思ったより簡単に物事が通る、抵抗らしい抵抗がない。「えっ、こんなにスムーズでいいの?」と拍子抜けするくらい、軽やかに上っていける時です。
とるべき行動
進める時なので、流れを止めずに前に進んでいくといいと思いますよ。せっかく開けている道ですから、ためらわずに歩を進めてみてください。ただ、あまりに障害がないぶん、足元を確かめながら進むくらいの落ち着きは持っておくと安心です。
気をつけたいこと
すいすい進めると、つい調子に乗って、確認や足固めをおろそかにしがちです。空き家のように見える街でも、よく見れば落とし穴があるかもしれません。スムーズな時ほど、一歩ずつの確かさを忘れないでくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は地水師(ちすいし)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

六四(りくし)

白文王用亨于岐山、吉无咎。

書き下し王、用(もっ)て岐山(きざん)に亨(きょう)す。吉にして咎(とが)无(な)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
正しい道を、まっすぐ昇っていける段階かもしれません。心を込めて事に当たる時。
今は、こんな時
自分の昇っていく道に、後ろめたさがなく、堂々と進んでいける——そんな清々しさを感じていませんか?正々堂々と評価された、筋を通したやり方で前に進めている、信じる道をまっすぐ歩けている。昔の王が神聖な山で天を祭り、心を込めて事を始めたように、今は真心を込めて取り組むことが、そのまま良い結果につながる時です。
とるべき行動
もしそうなら、自分の進む道を信じて、誠実に、心を込めて取り組むのがよさそうです。正しくまっすぐに昇っていけば吉。咎められることもない時ですから、自信を持って進んでください。何か大切なことを始めるなら、おざなりにせず、丁寧に心を込めて——その姿勢が運を引き寄せますよ。
気をつけたいこと
順調だからと、感謝や謙虚さを忘れて雑になると、せっかくの正しい流れがにごってしまいます。今は、心を込めること。丁寧さと誠実さを保てば、この昇り運はしっかり実っていきます。

この爻が陰陽反転すると、卦は雷風恒(らいふうこう)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

六五(りくご)

白文貞吉、升階。

書き下し貞(てい)にして吉、階(きざはし)を升(のぼ)る。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
階段を一段ずつ。着実に、正しく昇っていける段階かもしれません。
今は、こんな時
一足飛びにではなく、一段ずつ確実に上の位置へ上がっていく——そんな、地に足のついた上昇を感じていませんか?順を追って昇進していく、段階を踏んで信頼を積み上げている、着実にステップアップしている。派手なジャンプアップではないけれど、踏み外しのない、しっかりした上り方ができている時です。
とるべき行動
今は、正しいやり方を守りながら、一段ずつ着実に昇っていくのがよさそうです。近道や飛び級を狙わず、目の前の一段を確実にのぼること。正しく進めば吉。階段を順にのぼっていけるような、安定した良い時ですから、焦らずこの調子で続けてみてください。
気をつけたいこと
着実に進めているからこそ、「もっと早く」と段を飛ばしたくなるかもしれません。でも、一段抜かしは足を踏み外すもと。今のペースを崩さず、地道に積み上げることが、いちばん遠くまで連れて行ってくれますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は水風井(すいふうせい)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階

白文冥升、利于不息之貞。

書き下し冥(くら)きに升(のぼ)る。息(や)まざるの貞(てい)に利(よろ)し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
昇りすぎて、止まれなくなる段階。そろそろ引き際を考えたい時かもしれません。
今は、こんな時
もう十分に上ってきたのに、暗がりの中をなおも昇ろうとして、どこへ向かっているのか自分でも見えなくなっている——そんな"行き過ぎ"のサインに、心当たりはありませんか?十分な地位や成果があるのにまだ上を求めてしまう、勢いがついて止まりどきを見失っている、欲が欲を呼んで引き返せなくなっている。前へ前へと進む癖がついて、ブレーキの踏み方を忘れかけている時です。
とるべき行動
もし思い当たるなら、これ以上むやみに高みを目指すのは、いったん立ち止まって考え直したい時です。外へ向かって昇り続けるエネルギーを、今度は自分の内側を磨くことに向けてみてください。休まず正しさを保ち続けること——そこにだけ、これからの利がある時です。地位や成果を追うのではなく、コツコツと自分を律し、誠実さを保つことに力を注ぐといいと思いますよ。
気をつけたいこと
「ここでやめたらもったいない」と、勢いのまま昇り続けると、暗闇の中で道を見失ってしまいます。今は、外への上昇を止めて、内側を整える時。やみくもに上を目指す欲を手放せるかどうかが、分かれ目になりますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は山風蠱(さんぷうこ)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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