天火同人

てんかどうじん

人と心を合わせ、力を一つにしていく時

上卦:乾(天) 下卦:離(火)

卦辞 ― この卦全体のことば

白文同人于野、亨。利涉大川、利君子貞。

書き下し人に同(どう)ずるに野(や)に于(おい)てす、亨(とお)る。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よろ)し。君子(くんし)の貞(てい)に利し。

やさしく読み解くと

今のあなたの周りには、人と手を取り合い、志を同じくする仲間と力を合わせていく——そんな、協力と連帯の空気が流れているようです。

燃え上がる火が天に向かうように、明るく開かれた心で、同じ方向を目指す人たちが集まってくるイメージですね。

仲間と何かを成し遂げようとする時、人とのつながりがカギになる時、一人では越えられない壁に向き合っている時、チームや組織で動く時に、この卦はよく出ます。

ただ、ひとつだけお伝えしておきますね。

「人と一つになる」と言っても、どんな相手と、どこまで開かれた心で結ぶかで、その質はまるで変わってきます。内輪だけの仲良しになるのか、広く志を同じくできるのか。それはあなたが今どの段階にいるかで分かれます。

だから、この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。

六つの爻辞 ― 段階ごとのことば

卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。

いちばん下の爻

初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階

白文同人于門、无咎。

書き下し人に同ずるに門(もん)に于てす、咎(とが)无し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
わけ隔てなく人と交わり始める段階。素直に開いていって大丈夫な時です。
今は、こんな時
家の門を出てすぐ、まだ身内の輪の外で、いろんな人とフラットに交わっていく——今はそんな、開かれた出会いの入り口にいるのかもしれません。新しい場に飛び込んだ、いろんな立場の人と関わり始めた、まだ特定のグループに染まっていない。そんな状況、ありませんか?まっさらな気持ちで人とつながれる、貴重なタイミングだと思います。
とるべき行動
身内や派閥にこだわらず、広くオープンに人と関わってみるといいと思いますよ。えこひいきのない、開かれた交わりなら咎められることはないと出ています。「この人は仲間、この人は外」と線を引かず、誰にでも同じ態度で。その公平さが、後々の広い信頼につながっていきます。
気をつけたいこと
最初から特定の誰かと深く囲い込みすぎると、せっかくの広いつながりが狭まってしまいます。まずは浅く広く、いろんな人と。深い縁は、その中から自然に育っていきますよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は天山遯(てんざんとん)に変わります(之卦)。

下から2番目の爻

六二(りくじ)

白文同人于宗、吝。

書き下し人に同ずるに宗(そう)に于てす、吝(りん)。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
身内だけで固まりがちな段階。輪を広げたい時かもしれません。
今は、こんな時
気心の知れた仲間うち、身内、いつものメンバー——その内側だけで結びついて、外に開いていけていない。今はそんな、輪が狭くなりがちな時かもしれません。同じ顔ぶれとばかり付き合っている、派閥や部署の枠から出られない、内輪では盛り上がるけれど広がらない。そんな心当たり、ありませんか?居心地はいいけれど、少しもったいない局面です。
とるべき行動
心地よい内輪に安住せず、意識して輪の外に目を向けてみるのがよさそうです。仲間うちで固まることは、悪くはないけれど、狭いところに偏ると物足りない結果になりがちと出ています。違う立場の人、まだ知らない人にも声をかけてみる。そのひと手間が、つながりを大きく育てます。
気をつけたいこと
「うちのメンバーだけで十分」という気持ちは、知らないうちに視野を狭くします。身内びいきが過ぎると、外から見て閉じた印象を与えることも。輪を開く勇気を、少しだけ持ってみてください。

この爻が陰陽反転すると、卦は乾為天(けんいてん)に変わります(之卦)。

下から3番目の爻

九三(きゅうさん)

白文伏戎于莽、升其高陵、三歲不興。

書き下し戎(じゅう)を莽(くさむら)に伏(ふ)せ、其の高陵(こうりょう)に升(のぼ)る。三歳(さんさい)興(おこ)らず。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
疑いや警戒で動けなくなる段階。にらみ合いが長引きやすい時のようです。
今は、こんな時
兵を草むらにひそませ、高い丘に登って相手の出方をうかがう——今は、人を信じきれずに身構えて、にらみ合ったまま動けずにいる時かもしれません。あの人は敵か味方かと疑っている、本音を出せずに探り合っている、ライバル意識で構えてしまう。そんな状況、ありませんか?警戒しているうちに、長いあいだ事が進まない、そんな膠着した局面です。
とるべき行動
疑いで身構えるほど、動けない時間が延びていきます。ここは、いったん武装を解いて、自分から胸の内を開いてみるのがよさそうです。相手を出し抜こうとするより、正直に話す、歩み寄る、警戒を緩める。にらみ合いを終わらせるのは、たいてい先に手を開いたほうです。
気をつけたいこと
「相手が攻めてくるかも」と疑い続けると、何年も平行線のまま、というのがこの段階の落とし穴です。勝とう・出し抜こうとする気持ちが強いほど、かえって前に進めません。力比べより、心を開くこと。そこに目を向けてみてください。

この爻が陰陽反転すると、卦は天雷无妄(てんらいむぼう)に変わります(之卦)。

下から4番目の爻

九四(きゅうし)

白文乘其墉、弗克攻、吉。

書き下し其の墉(よう)に乗(の)るも、攻(せ)むるに克(あた)わず、吉。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
争いかけて、思いとどまる段階。引いた判断が吉になる時です。
今は、こんな時
高い城壁の上まで攻め上がったのに、いざとなって攻めるのをやめる——今は、ぶつかろうとして、寸前で思いとどまる、そんな岐路にいるのかもしれません。言い返そうとして飲み込んだ、勝負を仕掛けようとして引いた、衝突しかけて踏みとどまった。そんな場面、ありませんか?勢いに任せれば争えるけれど、心のどこかで「これは違う」と感じている局面です。
とるべき行動
攻めきれる状況でも、あえて引く——その判断が、ここでは良い結果につながります。攻めずに思いとどまれば吉と出ています。意地や勢いで押し切らず、「本当にこの争いに意味があるか」と立ち止まる。引く強さを選べた時、流れはあなたの味方になります。
気をつけたいこと
「ここまで来たんだから」と引っ込みがつかなくなって突っ込むのは、避けたいところ。引くのは負けではなく、自分の筋を取り戻す選択です。踏みとどまれた自分を、責めないでくださいね。

この爻が陰陽反転すると、卦は風火家人(ふうかかじん)に変わります(之卦)。

下から5番目の爻

九五(きゅうご)

白文同人、先號咷而後笑。大師克相遇。

書き下し人に同ず、先には號咷(ごうとう)して後(のち)には笑う。大師(たいし)克(か)ちて相(あい)遇(あ)う。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
隔てられて泣いた後に、心が通じ合う段階。再会の喜びが待つ時かもしれません。
今は、こんな時
本当は分かり合えるはずの相手と、事情があって隔てられている——先に涙を流し、苦しい思いをするけれど、最後には笑い合える。今はそんな、すれ違いの先に再会が待っている時かもしれません。大事な人と距離ができてしまった、誤解で心が離れている、障害があって思いが届かない。そんなもどかしさ、ありませんか?今は苦しくても、それで終わりではない局面です。
とるべき行動
今すぐ通じ合えなくても、諦めずに、まっすぐな気持ちを持ち続けるといいと思いますよ。隔ての先で、ぶつかり合いを越えて、ついに心が通じ合えると出ています。誠実さを曲げずに向き合い続ける。時には壁を打ち破る覚悟も要りますが、その先には、笑って再会できる場面が待っています。
気をつけたいこと
先に来る「泣く」局面で心が折れて、関係を投げ出してしまわないことです。今のつらさは、通じ合うまでの途中経過。焦らず、でも諦めず、その思いを大切に持ち続けてください。

この爻が陰陽反転すると、卦は離為火(りいか)に変わります(之卦)。

いちばん上の爻

上九(じょうきゅう) ― いちばん最後の段階

白文同人于郊、无悔。

書き下し人に同ずるに郊(こう)に于てす、悔(く)い无し。

やさしく読み解くと

ひとことで言うと
遠く離れた、淡い結びつきの段階。深くはないが、悔いも残らない時です。
今は、こんな時
人里離れた郊外で、ゆるやかに人とつながる——今は、深く濃密に結びつくというより、当たり障りのない、淡い距離感のつながりの中にいるのかもしれません。立場上どうしても一歩引いている、深入りせず適度な距離で付き合っている、輪の中心からは外れた場所にいる。そんな状況、ありませんか?熱い連帯とはいかないけれど、それはそれで穏やかな局面です。
とるべき行動
無理に輪の中心に飛び込もうとせず、今の距離感を受け入れてみるのもいいと思いますよ。深い結びつきにはならなくても、後悔するようなことはないと出ています。広く浅く、穏やかに。今は深いつながりを求める時ではなく、静かに人と関わる時だと割り切ってみてください。
気をつけたいこと
「もっと中心で、もっと濃く」と無理に距離を詰めようとすると、かえって空回りしがちです。淡いつながりには淡いつながりの良さがあります。物足りなさを感じても、その距離を惜しむ必要はありませんよ。

この爻が陰陽反転すると、卦は澤火革(たくかかく)に変わります(之卦)。

白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。

読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。

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