地雷復
一度離れたものが、また戻ってくる。再スタートの時
上卦:坤(地) 下卦:震(雷)
白文復、亨。出入无疾、朋來无咎。反復其道、七日來復、利有攸往。
書き下し復(ふく)は、亨(とお)る。出入(しゅつにゅう)に疾(やまい)无く、朋(とも)来たりて咎(とが)无し。其の道を反復(はんぷく)し、七日にして来復(らいふく)す。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。
やさしく読み解くと
今のあなたの周りには、長い冬が終わって、地の底からかすかな春の気配が戻ってくる——そんな「立ち返り」の空気が流れているようです。
真冬の地中で、ひとつだけ陽の芽が動き始める。失われていたものが、ゆっくりと戻ってくる局面ですね。
いったん途切れた縁が戻ってくる時、調子を崩していたものが回復に向かう時、迷いから本来の道へ立ち返る時に、この卦はよく出ます。
この卦は「亨る(通じる)」と告げ、出入りに障りなく、仲間も戻ってきて、めぐりめぐって元の場所へ還ってくる——そんな良い再スタートの気配を持っています。前へ進むにも利がある時です。
ただ、「戻る」と言っても、すぐに引き返せて大吉となる段階もあれば、迷い続けて戻る機を逃してしまう段階もあります。
立ち返り方はあなたが今どの段階にいるかで変わります。この先の「今いる段階」が、いちばんの答えになりますよ。
六つの爻辞 ― 段階ごとのことば
卦には、下から上へ六本の「爻(こう)」があります。同じ卦でも、どの爻に注目するかで場面が変わっていく——一つの物語の六つの場面だと思ってください。下から順に見ていきましょう。
初九(しょきゅう) ― いちばん最初の段階
白文不遠復、无祗悔、元吉。
書き下し遠からずして復(かえ)る。悔(く)いに祗(いた)る无(な)し。元(おお)いに吉。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 遠くへ行かないうちに引き返せる段階。今ならすぐ立て直せて、大いに良い時です。
- 今は、こんな時
- 道を少し外れかけたけれど、まだ深入りする前に「あ、違うな」と気づいて引き返せる——そんな場面にいませんか?間違いに早めに気づけた、悪い習慣がまだ浅いうちにやめられる、迷い始めたばかりで軌道修正がきく。遠くまで行ってしまう前の、いちばん戻りやすいタイミングです。もし心当たりがあるなら、これはとても恵まれた段階なんです。
- とるべき行動
- 気づいた今のうちに、迷わず正しい道へ引き返すのがよさそうです。早く立ち返れば、後悔に至ることもなく、大いに良い結果になる時ですから、「もう少しだけ」と先延ばしにしないでください。早い修正ほど、傷は浅く、立て直しは確実ですよ。
- 気をつけたいこと
- 「まだ大丈夫、あとで戻ればいい」と引き延ばすと、戻る距離がどんどん伸びてしまいます。気づいた瞬間が、いちばん良い引き返しどき。その直感を逃さないで。
この爻が陰陽反転すると、卦は坤為地(こんいち)に変わります(之卦)。
六二(りくじ)
白文休復、吉。
書き下し休(やす)らかに復(かえ)る。吉。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 気持ちよく、すっきりと立ち返れる段階。良い時です。
- 今は、こんな時
- 肩の力が抜けて、無理なく良い方向へ戻れている——そんな心地よさを感じていませんか?素直に過ちを認められた、良い手本に倣って自然と立て直せた、わだかまりなく元の関係に戻れた。誰かの良い影響を受けて、気持ちよく立ち返れる時です。もしそうなら、今はとてもなめらかな回復の段階なんです。
- とるべき行動
- 意地を張らず、素直に良い方向へ戻っていくのがよさそうです。気持ちよく立ち返れる、吉となる時ですから、変にこじらせず流れに乗ってください。近くにいる良い手本や、信頼できる人に倣うと、立て直しがいっそうスムーズになりますよ。
- 気をつけたいこと
- 順調だからこそ、「自分一人の力で戻れた」と思いがち。良い影響をくれた人やきっかけに、そっと感謝を向けておくと、この良い流れが長持ちします。
この爻が陰陽反転すると、卦は地澤臨(ちたくりん)に変わります(之卦)。
六三(りくさん)
白文頻復、厲无咎。
書き下し頻(しき)りに復(かえ)る。厲(あや)うけれども咎(とが)无し。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 何度も迷っては戻りを繰り返す段階。危なっかしいけれど、戻り続ければ咎はありません。
- 今は、こんな時
- 良くしようと戻っては、また元の悪い癖に引き戻され、また戻り直す——そんな行ったり来たりを繰り返していませんか?決意してはくじけ、また決意し直す。やめると決めたことに何度も手を出してしまう。良い方向と悪い方向を行き来して、自分でも不安定さを感じている。もし心当たりがあるなら、それは確かに危なっかしい状態です。でも、ひとつ安心してほしいことがあります。何度つまずいても、そのつど立ち返り続けるなら、咎められることはない時なんです。
- とるべき行動
- 揺り戻しがあっても、自分を責めすぎず、また立ち返ることをやめないのがよさそうです。大事なのは、完璧に一発で直すことより、「何度でも戻ってくる」こと。転んでもそのたび起き上がる——その繰り返しが、ちゃんと前進になっています。
- 気をつけたいこと
- 「また失敗した、もうダメだ」と投げ出してしまうのが、いちばんの落とし穴。揺れること自体は咎ではありません。戻るのをやめてしまうことだけ、避けてくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は地火明夷(ちかめいい)に変わります(之卦)。
六四(りくし)
白文中行獨復。
書き下し中行(ちゅうこう)して独り復(かえ)る。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 周りに流されず、自分ひとりでも正しい道へ立ち返る段階のようです。
- 今は、こんな時
- 周囲の多くが間違った方へ進んでいく中で、あなただけは「こっちじゃない」と気づき、ひとり本来の道へ戻ろうとしている——そんな立場にいませんか?周りが楽な方・悪い方へ流れる中で自分は踏みとどまる、みんなと違う選択になっても正しさを取る、孤独でも信じる道へ引き返す。もしそうなら、それはとても勇気のいる、まっとうな段階なんです。
- とるべき行動
- 周りと違っても、自分が正しいと信じる道へ、ひとりでも立ち返るのがよさそうです。多数派でないことを恐れなくて大丈夫。真ん中をまっすぐ歩いて、独り戻る——その姿勢には、ちゃんと意味があります。孤独を引け目に感じないでください。
- 気をつけたいこと
- ひとりで戻る道は心細くて、つい「やっぱりみんなに合わせようか」と揺らぎがち。でも、ここで大事なのは流されないこと。静かに、でも確かに、自分の道を選んでくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は震為雷(しんいらい)に変わります(之卦)。
六五(りくご)
白文敦復、无悔。
書き下し敦(あつ)く復(かえ)る。悔(く)い无し。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 手厚く、誠実に自分を省みて立ち返る段階。悔いの残らない時です。
- 今は、こんな時
- 表面的に直すのではなく、腰を据えて深く自分を振り返り、誠実に立て直そうとしている——そんな時にいませんか?じっくり自己反省できている、根本から生き方を見直している、地に足のついた立ち直りをしている。軽い気の迷いではなく、厚みのある、本気の立ち返りです。もしそうなら、今はとても落ち着いた、成熟した回復の段階なんです。
- とるべき行動
- 焦らず、誠実に自分を見つめ直しながら立て直していくのがよさそうです。手厚く、芯から立ち返れば、後悔の残らない時ですから、表面をつくろうのではなく、根っこから整えてください。深く省みたぶん、立ち直りも本物になりますよ。
- 気をつけたいこと
- 誠実に省みるのは良いことですが、自分を責めすぎて立ち止まりすぎないように。反省は、前へ進むためのもの。見つめ直したら、ちゃんと一歩を踏み出してくださいね。
この爻が陰陽反転すると、卦は水雷屯(すいらいちゅん)に変わります(之卦)。
上六(じょうりく) ― いちばん最後の段階
白文迷復、凶、有災眚。用行師、終有大敗、以其國君、凶;至于十年、不克征。
書き下し迷いて復(かえ)る。凶(きょう)。災眚(さいせい)有り。用(もっ)て師(いくさ)を行(や)れば、終(つい)に大敗有り。其の国君(こくくん)に以(およ)びて、凶。十年に至るまで、征(ゆ)くこと克(あた)わず。
やさしく読み解くと
- ひとことで言うと
- 戻る機会を逃して、迷いの中にとどまってしまう段階。ここは凶。早めに引き返したい時です。
- 今は、こんな時
- 戻れるタイミングが何度もあったのに、ずるずると逃し続けて、気づけば深く迷い込んでしまった——そんな危うさ、感じていませんか?引き返すべき時に意地を張ってしまった、立て直す機会をことごとく見送ってきた、間違った方向に進みすぎて戻り道が見えない。もし心当たりがあるなら、ここは正直に厳しい段階で、無理に押し進めれば大きな失敗につながり、長く尾を引きかねません。
- とるべき行動
- 今からでも、できる限り早く立ち止まり、引き返す方へ舵を切ってください。ここで勢いに任せて突き進む(「戦を起こす」ような無理押しをする)と、深手を負います。遅れていても、引き返す決断にいちばん価値がある時です。一歩でも、戻る方へ。
- 気をつけたいこと
- 「ここまで来たんだから引けない」という気持ちが、いちばんの落とし穴。その意地が、立て直しをさらに遠ざけます。失敗を認めて戻ることは恥ではなく、長い損失を止める唯一の道ですよ。
この爻が陰陽反転すると、卦は山雷頤(さんらいい)に変わります(之卦)。
白文は朱熹『周易本義』系の経文(中國哲學書電子化計劃 ctext.org・パブリックドメイン)、書き下しは当サイトによる訓読です。
読んで学ぶのもいいですが、易は「自分の問いで引いてみる」と、ぐっと身近になりますよ。
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