地澤臨の仕事での意味
仕事が上り調子で広がる時。ただし勢いは永遠ではない——誠実さで長持ちさせて。
任される範囲が広がっていく、上り調子の時です。後輩や部下ができた、新しい案件を持たされた、関わる相手が増えてきた——下から伸びてきた力が上へ広がっていく、そんな局面でよく出る卦です。原典もこの卦を「大いに通じる。正しさを守るのがよい」と言っていて、流れそのものは追い風。ただし同じ原典が「八月に至れば凶」——つまり、この勢いは永遠ではない、とも釘を刺しています。追い風の時に何を積んでおくかが、この卦の問いなんです。
卦全体としては、動くのに向いた時です。筋を通して動けば大いに通じる、と原典が言ってくれていますから、提案も挑戦もためらう必要はありません。ただし「良い時期はいつか転じる」という警告つきの追い風なので、勢いに全部を賭けるより、流れがあるうちに信頼と実績を積んでおく動き方が合っています。それと、この卦は関わり始めの誠実さから、任せる知恵まで、段階によって「臨み方」が変わる物語です。占いで爻まで出ている方は、下の「出た爻による違い」で自分の段階を確かめてみてください。
流れが良い時なので、動くこと自体には向いた時期です。ただ、この卦が後押しするのは「心を通わせながら近づく」動き方——つまり、勢い任せの一発勝負ではなく、応募先や紹介してくれる人と丁寧に関係を作りながら進むやり方です。もうひとつ、今の職場での評価が育っている最中の可能性もあります。上り坂の途中で降りるのか、登り切ってから動くのか。「なぜ今なのか」を一度言葉にしてから決めても、遅くはないと思いますよ。
勢いがある時のあなたは、周りの目には「ぐいぐい来る人」と映りやすい時です。悪いことではないのですが、あなたのペースに周りが追いついていない、というテンポの差が起きやすいんです。最近、話を進めるのが自分ばかりになっていませんか。それともうひとつ、この卦は「甘い顔で臨むと実りがない」と戒めます。いい顔をして本音を避ける関わり方になっているなら、耳の痛いことも正直に伝える相手を一人ずつ増やしていく——それがこの時期の信頼の作り方です。
新しいことを始めるエネルギーには恵まれた時です。異動や新プロジェクトの打診が来ているなら、前向きに検討する価値は十分あります。ただし原典の「八月に至れば凶」を思い出してください。今の追い風が続く前提で計画を立てると、風向きが変わった時に苦しくなります。始めるなら、勢いだけに頼らない設計を——固定客になってくれそうな人との関係、続けられる体制、風がやんでも回る規模。そこまで見て始めた挑戦なら、この上り調子はちゃんと働いてくれますよ。
油断と、なれ合いです。調子がいい時ほど、報告が雑になる、確認を飛ばす、気遣いを省く——その小さな手抜きが、追い風を早くやませます。もうひとつは、口当たりのいい言葉だけでチームを回そうとすること。機嫌を取ってその場を丸く収めるやり方は、この卦がはっきり「実りがない」と言う関わり方です。調子がいい今こそ、誠実さの手を抜かないでください。
流れがあるうちに、信頼を積んでおくことです。頼まれた仕事の期日を守る、小さな約束をちゃんと果たす、支えてくれた人に感謝を口に出す。派手さはなくても、上り調子の時に積んだ信頼は、風向きが変わった後もあなたを支えてくれます。動くなら駆け引きではなくまっすぐに——「大いに通じる」時ですから、素直さがそのまま武器になります。
占いで爻(動いた一本)まで出ている方は、段階によって「臨み方」が変わります。
- 初九 心を通わせながら関わり始める段階。新しい職場やチームに入ったばかりの人によく出ます。誠実な始め方なら吉、と原典が言っています。
- 九二 流れが味方して、何をしても通りやすい段階です。提案も挑戦も、ためらわず出して大丈夫な時です。
- 六三 いい顔となれ合いだけで回そうとすると実りがない、と戒められる段階。ただ、その甘さに自分で気づいて改めれば、とがめはありません。
- 六四 相手の立場まで降りていって、行き届いた真心で関われている段階。現場に足を運ぶその姿勢で、とがめなしです。
- 六五 自分で全部やらず、人を信じて任せられる段階。チームを率いる立場の人には、賢い任せ方が吉と出る、いちばんの追い風です。
- 上六 手厚く、情をもって人を支える段階。第一線を退いた立場や後進を育てる役回りで、その厚さが吉となり、とがめもありません。
最後に、これだけは。易が転職や独立の答えを出してくれるわけではありません。決めるのは、いつだってあなたです。でも、いま自分がどんな流れの中にいて、それが動く時なのか待つ時なのかが見えていれば、決断はずっと軽くなります。ここに書いた言葉は、そのための手がかりにしてください。
仕事での読み解きは、白文・書き下し(朱熹『周易本義』系、パブリックドメイン)と当サイトの解釈にもとづく、当サイトによる文章です。
気になる段階があれば、原典の卦辞・爻辞をじっくり読んでみるのもおすすめです。
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